2019-01-01から1年間の記事一覧

会っているけど会ってない人

年末年始、お寿司を握ってパックに詰める短期バイトを始めた。お正月がなくなっちゃうのをすこし残念に思ったけど、カラフルなお寿司を大量につくっている時間はずっと祭りをやっているみたいで、これはこれで思い出になりそう。高校生に高校生だと思われて…

あたたかい果物

自分が気に入って買ったものがほとんどない部屋で寝たり起きたりしているの、なんだか無防備すぎてメチャクチャになりそう。メチャクチャになりそうなのは決まって気分が落ち込んでいるときで、調子がいいときはそんなこと思わないのだから、調子がよくない…

あなたのつまらなさにいつも傷ついていた

マグカップ、忘れるところだった! と言って、職場に置いてるムーミンのマグカップを見ていた人が、翌日ちゃんとそのマグカップを忘れていった。それを片づけの日に預かって、バイトが終わって、ちょっと日を置いてからその人に連絡して、お茶をしにいった。…

自由の適用範囲

右折して、目の前に下がり途中の太陽がやってくる。フロントガラスがすこしのあいだ白んで、また透きとおる。まぶしさのなか、からだのすぐ脇を大きなトラックが通り過ぎて行くから、胸元がスカスカする。肩のあたりで固まっている力を流す。私は息をつくこ…

疲れてるおかげ

バイトが終わって、バイト中はできなかったことをやって自分を自分に戻している。それはつまり、すこし厄介な本を読んだり、深夜ラジオを聞いたり、カロリーの高い映像作品を見てみたり、といったことなんだけど、まだまだ自分に届くには時間がかかるみたい…

欠けない

自分のことを相づちを打つ機械にできるから、接客で人と関わるのは好きだ。いらっしゃいませ。店内のご利用ですか? お席までお持ちしますよ。ミルクはご入用ですか? 自分の話をせずに、こだわりを押しつけずに、ただ人のしてほしそうなことをして、言って…

星とアプリ

帰り際に「もうすぐお別れだから一緒に星を見たい」と頼まれた。可愛すぎてウケてしまった。(ポカポカ殴られた。)今やっているバイトもあと一週間ちょっとで終わりなので、そろそろシフトが合うのは今日が最後 という人が出てくる。ひとしきり笑い終わった…

機嫌その値打ち

見返りを期待して人に礼儀を払っているつもりはないのに、聴いている音楽をバカにされると傷つく。中途半端に紅葉した山を写真に撮らない。あなたと会ったり話したりすることを、単なる趣味にするつもりはない。それを道徳と呼ぶのもいいかもしれない。だと…

日々の安全性

何か嫌いなところがあったら言ってね って、やさしさみたいに言ってるけど、そのやさしさの向かう先は君であって私ではないよね。ということを数年経った今になって思う。そのときはそういう免罪符の売り合い、予防線の張り合いが楽しかったから言葉にしよう…

あかり

台風が来て、地元のあちこちが荒れている。とりたてて家庭内に大きな被害はないのだけど、道にばらまかれた砂利を見ると、憂鬱にも幸福にもあまり居場所がなくて困ってしまう。一昨日寝るときにはもう停電していて、その夜、雨がどれくらい降るのかもわから…

花の味

「しばらくは長野にいるから」と口にして、(そうなんだ)と自分で自分に相づちを打つ。こんな風に少しずつ、雲が形を変えるときのような速度で未来を選びとっている。たったひとつの会話、たった一度の行動で驚くほど変わってしまうこともあれば、何十回何…

汚い

ポピュラーになりすぎたバラードの、もうバラードとしてシリアスに受け止めてもらえないさま。曲名と歌詞をあげつらう知人の半笑いに、何故か「他人事じゃない」と感じてしまう。まぎれもなく、他人事なのに。どうしてこんなに引っかかるんだろう。芸人のゴ…

混じり気

高円寺に、大学の先輩の展示を見に行った。長野からきて、長野に帰ると言ったら驚かせてしまった。引越しやらなんやらで、先月から東京と長野を行ったりきたりしているから、自分としてはそこまで驚かすつもりはなかったのだ。追いかけるように台風がきてい…

山の履歴

前髪の毛先が睫毛の根元あたりをこするから、また美容院に行かないといけない。自分できれいに整えられたらいいのだけど、切り揃えるのは苦手で、どうもショッキングな仕上がりになってしまう。ものづくりの学校を出ているのに手先が器用でないなんて、つま…

旧作フォルダ

花火が見えるよと言われて階段を上がって行ったら、窓から小さい花火が見えた。近所の高校が後夜祭をしているようだった。あの花火の下に、今日が高校生活最後の文化祭 という人々がいるのか、と思ったら、なんだかゾッとした。自分が10代じゃなくなってから…

ばらす

文字を組んで印刷して製本した文章を、もう一度noteに貼るために分解する作業をしてるんだけど、これはほとんど、本を1ページずつビリビリ破いて皺を伸ばして並べる みたいなものだね。自分でやってて、あたし何してんだろ、って感じだ。まあいいんだけど。…

わざわざ口にして

バイトの面接をした。FaceTimeで。むかし神保町の喫茶店でバイトしてて、それを職務経歴に書いたんだけど、社長もその近くの喫茶店で働いていたとかで、3秒くらいで意気投合して「ここで働くのに本当に相応しい人材だよ」みたいなこと言われてその場で採用…

そのまま

3年前に司書講習に通っていた。初日、ぱっと会場を見渡して、いちばん仲良くなりたい子の隣りに座ったら、同じ大学の卒業生だった。ファスナーのマークが胸元にプリントされたネイビーのTシャツに、グレーのロングスカートを合わせて履いていて、それは姿勢…

移るし動く

朝食にクロワッサンを食べてそうだなぁと思うよ と言ったら、微笑みながら「朝食はオロナミンCだよ」って返されたの、よかったな。この前会った友人と、吉祥寺の街を歩いてたときに、何かの拍子に言われた。なんなんだろう、この絶妙な会話センス。ヤクルト…

夜の暗さにはもう飽きた

東京の部屋にいる。なにもすることがない。というよりは、なにもしたくない。はあ。でもスーパーまで歩いて行けるのと、人に会う約束があるのがうれしい。元気があれば行きたいギャラリーもすこしある。ちなみに、長野の実家からスーパーまで、歩いて行くと3…

姿

昨日、母が夕方に出かけていくときに「誰に会うの?」と聞いたら、「年に一度、七夕の時期に会うことにしているママ友」と答えられ、友情にしてはロマンチック過多だった。七夕なんて忘れていたな。一方私は夕飯の支度を頼まれ、トマトのスープをつくったは…

からいピーマン

食卓にピーマンがあると警戒する。母がよく、ピーマンと獅子唐を取り違えて出してくるからだ。それもその日に畑で収穫したばかり、とれたての獅子唐をである。母いわく、間違いなく「ピーマンの種がほしい」と店の人に伝え、買ったものだという。そうしてピ…

体験

ヘッドフォンがつけられるようになったから、久しぶりにちゃんと音楽を聴いてみた。びっくりするほど心に響く。曲への思い入れがああだとか、音質がこうだとかというのもあるけど、私には「世界で自分ひとりだけが今、この音楽を聴いてるのかもしれない」っ…

見えない

いきのびるしかないよなあ、と思う。どうやってとか、どれくらいとか、どうでもよくて、いきのびればいい。びんぼうの暇つぶしに自暴自棄は安あがりで都合がいいけど、健康によくないのは目に見えているし。 これまで何十回も見てきたはずの、バス停からアパ…

白のフワフワ

近所の緑色の生け垣に、なんらかの白いふわふわが突っ込まれているので、何かと思い近づいてみたら、抱きしめて寝るのにちょうどよさそうなサイズのスヌーピーだった。おそらく洗い立ての。世の中にはこんな風な愛し方もあるのかと思った。 何を見ても何かを…

たいらな日

きのう表参道に用事があったので、ちょっといいコーヒーショップに行ってちょっといいコーヒーを飲んだのだけど、コーヒーより水のほうがおいしかった。ショックだった。深煎りにしたのがいけなかったのかもしれない。それか、すごくいい水を出してくれたの…

春は葛藤

いちご大福を買うときに、いつもためらう。食べたいときのきもちと、食べたあとの幸福感がつりあわない食べ物というのがこの世にはたくさんある。その代表格としていちご大福を挙げてみたい。それ以外にたとえるならば、それはクリームソーダにのっかってる…

三月はいいにおい

話題が無くて、すきな季節は何かと聞かれたときに、秋と答えたことがある。その人は春が好きだと言っていた。春はいいにおいがするからだという。歩いていたら思い出した。 すっかり昼夜逆転してしまって、昼過ぎまで寝ている。医者にはいいことだと言われた…

ねむれないのはよくないらしい

午後1時、カーテンを一枚だけ開けて、おもちゃみたいなシベリアを食べる。昨日、谷中のちいさいパン屋さんで買った。トートバッグにいれっぱなしにして、忘れていた。おいしい。上司に愛想を尽かし、ついでに病気になったので仕事を辞めたのだが、すること…

きみのとうふのたましいを

今日は北区の図書館に行って来た。無職だった秋に都内の図書館を観光していたんだけど、それを久しぶりに再開した形になる。この観光のいいところは、知らない町を歩けるという点だ。図書館というのは基本的に駅からそれなりに離れたところにあるから。私は…