体験

ヘッドフォンがつけられるようになったから、久しぶりにちゃんと音楽を聴いてみた。びっくりするほど心に響く。曲への思い入れがああだとか、音質がこうだとかというのもあるけど、私には「世界で自分ひとりだけが今、この音楽を聴いてるのかもしれない」っていう上出来な勘違いができる空間を立ちあがらせることのほうが大事で、だから耳がよくなってうれしい。一週間くらい右耳を痛めてて、その治療だけに感情を集中させてたんだけど、体のほうを治したら心のほうがくたびれてまたダメになってきて、もういたちごっこじゃん、と思って今日は26度の東京の部屋で大の字になってわざわざ嫌なことをあれこれと思い出していた。

その時々の気分の手ざわりのようなものを後生大事に持ち運んでいるから、定期的に嫌な出来事が生々しくフラッシュバックして、背筋にもたれてくるのを感じざるを得ない。何回も繰り返し疑似体験するうちに感触が薄れていくものもあれば、変に輪郭がくっきりとしてくるものもあり、まるで幽霊を生みながら生きているみたいだなと思う。

後悔があるうちはまだいいのかもしれない。後悔っていうのは、対象が自己であれ他者であれ、何かに希望を持っていたからこそ感じられるものだろうから。...なんかこんなこと、前にも書いた気がするなあと思って直近のエントリをいくつか読み返してみたら、やっぱり似たようなことを書いていた。まあすぐに言うことが変わっちゃうよりはいいでしょう。とりあえず、今夜はそういうことにしておく。