軽すぎる布団は寝苦しい

布団の端々まで寒い。毛布と羽布団とただの布団、3枚くらい重ねているのに、軽くて心許ない。そういえば以前、不眠症の友人が冬は布団の重さが心地いいからよく眠れるのだと言っていた。実家でつかっていたものは重かったし、布地の桃色がいかにもカビ臭い桃色だったので、違うものに変えてしまったのだった。

 

10月にもなると、漠然と「今年もよく生き延びたなぁ」と思う。一年を振り返るには早すぎるけど、もの思いに耽るのに年末では忙しすぎる。今の私には、だらりとした言葉を並べて伸ばして丸めてやるくらいしかできることがないのだから、今頃の時期に自分をねぎらってやっておいたほうがいい。何しろねぎらいというのは、賞賛や批判とちがって多すぎて害になるということがないのだもの。

 

今年も、ろくに書かなかった。どんな希望も不安も、結局のところ他力本願という言葉に収斂していくのではないかという諦めのような気分で、毎日を過ごしていた。よそ者でいるかぎりさみしい。でも何もできない。だから厨房に立って、ニンニクやけどに苦しみながらニンニクを一心不乱に千切りしていると救われることがある。野菜の下準備を褒めてもらったことはあまり記憶にないけど、このまえ包丁を研ぐのが上手だと褒めてもらえて嬉しかった。

 

大きすぎる希望も大きすぎる不安も口にしないように、息を殺して暮らす日々。豊かな食事のメニューを読み上げるときだけ、私たちは幸せになれるんじゃないかと信じられる。