風邪と正しさから隠れて暮らす

コロナウイルスも流行っているし、今いちばんクリーンで信用できるのはひきこもりの人間なんじゃないかって思う。暇な夜。雨が雪になったり雪が雨になったりする、冬と春の境目の、山の奥深くにいる。明日は雪が降るから、車に乗っちゃいけないと言われた。毎日いろんな心配をするし心配をされる。未来について、いま選ぶべきことはもうほとんど選んでしまって、あとは春を待つだけなのに、時間が過ぎていくのが遅くて不安になる。私がいちばん私の選択を信じてやらないといけないのに、ひとりでいるのがつまらなくて本を読むのに集中できない。どこにいても何をしていても苦しむことばかり上手で、私も大概、つまらない人間だと思う。

金はないけど、逆に金以外はあるので、できることはやっておくべきだと思う。でも、できることってなんだ? 金がないのに時間はあるっていうのが人間いちばんダメだって吉田豪も言ってたな。知ってた。べつに時間をかけて叶えたい夢があるから仕事辞めたわけじゃなくて、辞めざるを得ない状況に追いこまれたからこんな山奥まで逃げてきただけなんだけど。定職に就いてる人に定職に就けと言われて、そりゃそうだよねと思う。経験と異なる人生を想像して肯定するのは難しい。自分に似ている人が好きなんだね。人に聞かれて、過去を思い出すとき、あんまり、人に嫌われたくないなあと思う。数少ない、人生のまともさに共感してもらってもなんだか寂しいよ。元々陽気な人間じゃないし、図書館のゆるキャラにケチをつけたり、山道で鹿のカップルを目撃したりして、それなりに楽しくやっているけど。