あたたかい暗がり

べつに働くのはぜんぜん好きじゃないけど、ゴミみたいな粉雪と、冬の日のつめたい空気を頬に受けながら猫背で歩く朝のことは悪くないなと思った。予定がないと午前中に起きて外になんか出ないし。朝の山、きれい。仕事に向かう道の落ち着いた、つまらない頭が私の動きを単純に正常にしていく。単純で正常なことをしていると単純で正常な人になれると思ったりする。そういう勘違いの積み重ねを自信と呼んで安心するのもいいかもしれない。そう口にしたら、あるいは幻滅されてしまうだろうか。それって自分のせいだね。

 

自分が書いた短歌が載ってる冊子を昼休みに休憩所で開いて、「がんばりたくないなー」と思いながら閉じた。もしも読書が世間で言われているようにもっと清潔で素敵っぽい趣味であったなら、ここまで執着することもなかった。素敵っぽいだけのことは疑わしくて、だから善光寺のライトアップをわざわざ見に行ってウケてしまったりする。読書の生臭さが好きだから、本をまだ読めている。大きな声で交わされる噂話ばかりの休憩所で、文字という伝達物の弱さを遅さを優しさのように感じてしまう。