2016-01-01から1年間の記事一覧

愛してみたいが時間がない

笑えるよな。数日前の自分にもう裏切られてる。時間がたてば忘れられるだろうと高をくくっていたことは、たいてい時間がたてばたつほど忘れられなくなることばっかりだ。声をあげたい。それからどうせとり戻したくなるだけでも。駅のホームに人があふれてい…

ブルガリア

今日はテストだった。毎日8時間あまりぶっつづけで講義を受けている。正直もたない。でも気力の守り方が徐々にわかってきた。「あまり聞こうとしない」ことである。初回の授業で「寝てもいい」と言われ、笑ったが、それってどうなんだ。社会に学びを促す方…

入り口

どんな音楽を聴いても心がいっぱいにならない。音楽になっていない感情はどうやって手なづければいいのだろう。先輩が早めの誕生日プレゼントにくれた髪留めをして大学に行く。はじめて行く大学に。まだ在学生の夏休みがはじまっていなくて、大学生みたいな…

こんな夜空はとりかえしがつかない

きのう、喫茶店でメロンを3切れも頂いてしまった。もう夏が終わってもいい。嘘。来月は友人とメロンパフェを食べに行くので、それまでは夏でいてくれなくっちゃ困る。毎日生きているだけで生きていけてしまって、このままじゃだめなんだけど、どうしたらい…

やまないギター

夜中にチョコレートを買いにいってしまうクセを、なおしたほうがいいと思うんだけどやめられない。前にも書いたけど、これはちょっとした自虐なのだ。コンビニの会計をやっているお兄さんが、何度もレジを打ち間違えていて心配になった。しかし商品をすべて…

スコール

「雨あがりの夜の涼しさは世界の窓という窓をひらく」—岩田宏 泣いてる暇があったら詩集でも読んだほうがいい。本を読むのは武器を研ぐことと同じで、たのしくはないけど必ず私を助けてくれる。おおきな感情の波にさらわれたときに、家族にも電柱にもすがら…

かえるのうた

そんなつもりじゃなかったのだけど、長野に降り立った途端、末の弟の高校へと連行された。文化祭でライブをしているから、と母がハンドルを切りながら私に告げた。知ってたけど、まさか連れていかれるとは思わなかった。弟は中学では剣道部をしていて、全国…

おぼえたての言葉のように

なんとなく憂鬱で、ぼんやりと力なく過ごしていた。それを曇り空のせいにしていた。でも昨夜、お客さんに世間話の延長で「おばあちゃんとおじいちゃんは元気?」と聞かれ、「おばあちゃんが転んじゃって、ずっと元気がないんです」と答えた。そのとき、わか…

あさはこわれやすいがらすだから

起きたらもう昼過ぎだったけど、とにかく何でもいいから詩集を読みたくて図書館に行った。休みの日だからおろしたてのミモザのワンピースを着たけど、すこし気分が浮ついて、いいんだかわるいんだか。いかにも女性らしい服を着ていると、気がぬけなくって疲…

部屋の電球が切れて3ヶ月。母が遊びにきて有無を言わさずとりかえてくれた今、とても明るい。ありがたい。でも夜なのにこんなにまぶしいなんて、やっぱり何か間違ってるんじゃないだろうかと思ってしまう。電球を見上げて「へやがあかるいよ…」とびっくりし…

雨がくる

奥歯をかみしめたら親不知が痛かった。バスのなか、どんよりと塞がっていく空をあおぐ。わたしのすきな季節の予感がする。青色の紫陽花を買って帰る。大学に寄ると、みんなつかれている。行事のはじまる直前のさわがしさ。いいこともわるいこともあるだろう…

あてつけのようなきみの茶碗

エレベーターの前でふと学生と2人きりになり、「なぜ今年も大学に残ることにしたんですか?」と聞かれ、言葉につまった。その質問には答えがあった。でもわたしは、彼にはそれを伝えられないと思った。嘘はつかなかった。しかし、わたしはひとりの相手にす…

今日の続き

黒板にクリームソーダのイラストを描いたら、きゅうに5つくらい注文が入ったこと、そういえばうれしかった。喫茶店の仕事のはなし。本気を出して描いたイラストが一週間誰にも消されずに残っていたこともあり、黒板を描く業務がいちばん成果があるかんじが…

夜闇に白ばら

大学のまわりの住宅街を歩いたら、あちこちの軒先で薔薇が咲いていた。惜しいなと思った。このことを1年前に知っていたら、冬でもここを歩くのがたのしかったにちがいない。いや、知ってたんだろうか。びっくりした。あと、顔をあげたら満月があかくてびっ…

新作のガム

木曜日の退屈をまぎらわすわかりきったジョークこれからは何度でもだまされてあげるから今日はもう 寝なよきみが授業中ないしょでくれたミントのガムはまだ冬物のコートのなかにあるよ人にもらったものなんかどうせすぐに捨てるんだろうって言ってたきみのさ…

バスがきて、きみはいつもとは違う席に座ってみる

なんだかさわやかな朝だった。高校時代からの友人に会いに初台へ行く。最近いちばんの気がかりだった資格の申し込みのための書類もきのう提出して、晴れ晴れとした気分だった。駅に着いて気づいた。財布を忘れた。…びっくりである。人と会う日に財布を忘れた…

青いイルカ

一週間前に買った、デルフィニウムのつぼみがようやく開きそうになっている。大学にもっていくつもりが、なんとなく家に置きっぱなしにしていた花だ。咲いたら大学に持っていこう。デルフィニウムというのは、ギリシア語でイルカを意味するデルフィスという…

グレープフルーツ・ジュース

ゴールデンウィークが終わってしまい、こころなしかみんなしょんぼりとして見える。些細なものごとの、接続がぎこちない。仕事終わりに、助手さんがジュースを買ってくれると言うので、オレンジジュースをお願いした。すっぱいものがおいしい気候だと思った…

のはら

故郷の写真を助手さんに見せたら、目をかがやかせて「トトロじゃん」って言ってくれたけど、わたしにはそれが一瞬よくわからなかった。田園、そこにさす夕陽、山並み、すべてずっとそこにあったものだから、見るものではなかったのだ。ビルと同じように山を…

チューリップこわい

こどものころに怖かったもの、赤いランドセル、黄色いスモック、クレヨン、それからいちめんのチューリップ畑。そんなことを友人と話していたら思い出した。あの子どもたちのことを知っているひとは、世界にどれくらいいるんだろう。わたしたちのことを知っ…

ホワイトハウス

もう全然、喫茶の仕事に行きたくなかった。前回、誤解があって手ひどく怒られ嫌われた先輩のことを思い出して。謝ってもらったはいいけれど、まだ仕事は完璧にできないだろうし、また機嫌をそこねてしまったらと思うと怖かった。何より気まずかった。「やら…

火事

ぼうっとしていたらロウソクが倒れて燭台が燃えていたので、玄米茶で消火した。わたしが電球を付け替えるのが先か、家が燃えるのが先かという話になってきた。生きるって命がけだな。電気屋に行きたくない。そもそもこのアパートの照明のことをたいして好き…

花束

母の日におくる花束のお金を払った。銀行にふりこんでいいとのことだったけど、近所なので直接お店で支払おうと思って、花屋に行った。そうしたら、「せっかくだから今、メッセージを書きますか?」と提案してくれたのだった。すごく照れくさかったのだけど…

つめたい雨のなかを歌いながら歩いていく

落ちこみをお腹のすみに残したまま、静岡の友人と遊びに行った。あとからあとから愚痴があふれてしまって申し訳ないなと思っていた。そうしたらその子が帰り際、CDをプレゼントしてくれた。びっくりした。焼いてくれたのだ。手作りのブックレットを開くと、…

狭い体

あやふやなものを受けとりすぎている。悪意も善意もほんとはなくって、みんなただ本能に反応して生きているだけなのかもしれない。そうであるとしたら、人となかよくするってことはほんとうに難しくて、でもほんとうはずっと単純なことだ。あなたにやさしく…

ミトン

チェコのアニメーションをながめていた。授業の資料をつくるために。先生からもらったアルバイトに、やっと手をつけられると思ったのだけど、起きたときから体温が高くて、頭がぼうっとしてしまう。それでも、なんとか真新しいビデオデッキを箱から取り出し…

こころの平らなところ

母の日に贈る花を注文した。そんなことをするのはうまれてはじめてで、すこし不安だ。でも、やりたいと思ったときにやる、ということを今までも大事にしてきたから、贈ろうと思う。なんでいきなりそんなことをしようと思ったのかって、たぶんカーネーション…

さち

家の裏山にはえていた、たらの芽のことを考えている。今頃すくすくと育って、収穫するのにちょうどいい大きさなのではないか。たらの芽、食べるのは嫌いだけど、あれを指先でコロンともぎとるときの感触がすきだった。はやくしないと、鹿がたべちゃうよ。お…

トーストとオムレツ

ねむけの熱が全身にひろがっていくときの、はてしない安らかさ。電車のなかでうごけなくなるあの感じ。あの感じをずっと体にもてあましていたい。たとえば降りる駅がわからなくなっても。スヌーズ機能のスヌーズが「うたたね」って意味だとインターネットで…

花も団子も

花見をした。葉桜だったけど。春の空気を思いきり吸いこめたのが、なんだかひさしぶりだったから、それだけですこしうれしかった。シートの上に団子とからあげを並べて、ボートに乗って、みんなでセブンティーンアイスを食べながら帰った。ぜんぜん風流じゃ…