新作のガム

木曜日の退屈をまぎらわす
わかりきったジョーク
これからは何度でも
だまされてあげるから
今日はもう 寝なよ

きみが授業中
ないしょでくれたミントのガムは
まだ冬物のコートのなかにあるよ
人にもらったものなんか
どうせすぐに捨てるんだろうって言ってた
きみのさみしさが
すこしは癒えるといいなと思った
でもそんなこと
そんな僕のこと
きみは考えもしないんだろうな
まあ いいさ

とりあえず声をあげていれば
誰かが聞いてくれる日々の
優しさに痺れるだけで
何ひとつかえしゃしない
そんな
あてつけのような鈍さ
知っているよ

僕は
傷つくのが 人よりちょっと上手で
傷つけたことには気づかない
きみのずるさが
なんだか 許せなくて
そのままで充分やさしい
きみのまぶしさが
いつだって しょうがないから
握りしめたまま差し出す
ふたつのこぶしのどちらかに
きみがむかし
食べたいと言っていた
葡萄のガムを入れておくんだ