好きな人をこの手で守れたら

ハイビスカスティーをいれている。すっぱくて、いいにおい。台風の夜にうってつけという気がする。これは誕生日プレゼントに、ってこの前会ったひとがくれたものなのだけど、誕生日プレゼントにハイビスカスティーをくれるって、なに? そんな素敵なこと、私だったら思いつかないよ。うれしいな。

今日でまたひとつ歳をとった。風が強いからどこにも行きたくなく、昨日郵便受けに届いていた手紙を読んで泣いたり、高田梢枝の『秘密基地』という曲を聴いて泣いたりしていた。誕生日はクリスマスと同じくらい、何か思いがけないことがあったらいいな、と期待してしまうので苦手だ。抽選のたこ焼き機が当たるとか、足の指の爪を切ったら小人になるとか。まあそんなことはなかった。いや、そんな誕生日って違うか。そもそも、お祝いされるってことに慣れていなくて、誕生日っていつもどういう感じで迎えればいいのかわからないんだ。考えてもみてほしい。8月24日、というのは小学校から大学までまるっと「夏休み」の日だ。それも夏休み終わりかけの。みーんな、買いっぱなしの手持ち花火を消化したり、宿題を消化したりしている。社会人になってからも夏休みがある私なんかは、何か約束でもしないかぎり、当日に家族以外の人と会うってことがない。だから基本的に誕生日はひとりで過ごす。わざわざ会うのって、なんか恥ずかしいし。

働かないと、生きていることがとてもゆっくりとしていて困ってしまう。

昨年の秋頃に、大学の同期を自殺で亡くした。あれから大分時間が経ったというのに、今でも、あれはいったい、私にとってどういう出来事だったのか、ということをたまに考えてしまう。彼とはそこまで親しい間柄というわけでもなかったのだけれど、かわした会話を途切れ途切れに思い出すことがある。立ち居振る舞いが凛として、とても目立つ人で、いつも、次はどんなことをするんだろう、と周りから注目されていた。もう、そんな噂をする機会もない。彼の近くにいた人たちが、「もっと自分にも何かできたのではないか」と言うのを直後、さまざまな場所で聞いた。そうだったのだろうか。そんなことは、ないのではないだろうか。そして、あなたは、大丈夫なのだろうか。

あれから、SNSで「死にたい」と呟く人を見かけることがなくなった。私達は大丈夫になったんだろうか。生きていることは善だろうか。死ぬことは悪だろうか。わからない。私にひとつ何か言えることがあるとしたら、生きるってことは答えを出さないってことなんだと思う。生きてさえいれば、答えじゃなくていい。ぜんぜん綺麗じゃない絡まった糸のようになって、ここで寝ていてもいい。だからもうすこし、答えのでないことをいっしょに考えよう。つまらなかった映画の感想を聞かせてほしい。聞いたことのない名前のお茶を飲みに行きたい。あなたが抱えている問題の、その話し相手に、たまに私を選んでくれたら、とてもうれしい。