あなただけが地獄の入り口

年上女性の笑い皺が好きなんだけど、原田知世以外にも宮沢りえとか、いいよねー。皺のつきかたまでおしゃれで、憧れる。でもそういう人って少数派かな。私はきっと、最強のおばあちゃんになれると思うけどな。「若くてかわいい」そう言われるたびに、いつか「おばさん」のひと言で拒絶されることもあるんだろうなと心配してしまう。言っても、もう25だし、若いって言われるほど若くないはずだ。そんなことを思って、職場の休憩室で白湯を飲んでいたら、「僕が出会った時に、あなたが15才でも35才でも45才でも、きっと好きになったよ」と、言われたことを思い出した。今にしてみれば熱烈な愛の告白だ。そのときには既に愛とか終わっていて、私の耳も手遅れだったから、よく聞こえなかった。でもこういう、その場限りの熱のこもった言葉に、人生のいろんな場面でふいに、体重を軽くしてもらえることがある。不思議なことに、それがたまたま今日だった。なんてこと、してくれたんだ。ねえ聞きたいんだけど、いいかげん私を好きでいるのは、やめてくれましたか?

過去につきあった人、というか、好きになった人のことを悪く言いたくないのだけど、こうして書こうとすると悪口ばかりだから、結局、恋のことを何一つとして書けない。会いたくなくて、思い出したくもない。世界から消えてくれないのなら、せめて私の人生からはいなくなってほしい。そう思っているのだけど、そう思っているうちに、あなた達は私の一部になってしまった。忘れていたけれど、あなたが私のものとか、私はあなたのものとか、そんな話をする前に、私達は世界のものだったのだ。

もうすこし、思い出とのいい付き合い方がわかったら、私はまた強くなれるだろうか。いったいどれくらい強くなれば、もう強くならなくていいと言ってくれる。どれだけの人と出会えば、もう誰とも会わなくてもよくなる。いったい誰と恋に落ちれば、二度と地獄に落ちなくて済む。答えがわかるまで、歳をとりつづける。