横顔

帰りの電車で、目の前に立っている女の人が泣いてた。目のふちをハンカチでおさえていて、ずっと頭より高いところを見ていた。その姿はみっともないどころか、むしろ凛としていて、夏の朝に、しずかな川をながめているようなきもちになった。隣りに立っている人が大きな花束をかかえていて、さっきからうわくちびるのあたりに、野草のにおいがする。泣けやしない。