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あてつけのようなきみの茶碗

エレベーターの前でふと学生と2人きりになり、「なぜ今年も大学に残ることにしたんですか?」と聞かれ、言葉につまった。その質問には答えがあった。でもわたしは、彼にはそれを伝えられないと思った。嘘はつかなかった。しかし、わたしはひとりの相手にすべてを明かすことができない。だからこんな風に、ふとした時間の隙間につまずく。

たましいは、毎日すこしずつだめになったり、新品になったりをくり返しているさ。そのさなかで誰にもあたらずにいることが大切で、そうあるにはとにかく、胸の傷を友人にすることだ。咳のとまらない肺でも口をUの字に保つことだ。笑顔なんか筋力だよ。できるだろう。ずっと練習してきたことだ。

誰かにいじわるを言いたいと思ったりする。当たり散らして許してほしいと思ったりする。きみのことだよ。人間は生きているかぎり、みんな同じ人間だ。なにが善悪なのかを考えもせず、ただ目の前に都合のいい人が現れるのを求めているだけなら、わたしの好きな人たちを傷つけるのはやめてくれ。いつも怒っていた。責められるのが仕事だったからだ。でも、理不尽だと思うことはなるべく笑い飛ばして、なにかハッピーなテロで解決してしまおうと思っている。来年にはもうここにはいないのだから、すこしくらい疲れてもいいのだ。わたしはもう充分やさしくしてもらった。だから、100パーセントの善意じゃなくっても感謝ができる。傷つけられても愛してしまえる。わたしがここにいるのはほかでもない。たったふたりの人にお礼が言いたかったからなのだ。