狭い体

あやふやなものを受けとりすぎている。悪意も善意もほんとはなくって、みんなただ本能に反応して生きているだけなのかもしれない。そうであるとしたら、人となかよくするってことはほんとうに難しくて、でもほんとうはずっと単純なことだ。

あなたにやさしくしたいけど、ここは人が多すぎる。あなたのことをわかってあげたいけど、わたしのあたまは狭すぎる。だからルールが必要だ。でもそのルールは、あなたひとりのためにあるわけではない。それがいつでも問題だ。

残業が終わったのが0時で、すぐに帰ればいいものをなんだか足がうごかず、ぼうっと窓の外の夜をながめていたら、一時間もたってしまっていた。砂嵐がふいている。音が耳の奥でたえず吹き荒れている。ただしずかな椅子がほしいと願った。誰もいない部屋で。じぶんの後ろめたさを打ち消すためにやさしさを振りまいてはいないか。世界平和のためにたたかっていたけど、いつの間にか戦争をしていた。だからこの静けさが、これほどまでにうさんくさい。

夢の中で見知らぬ人にナイフをふりあげられたけど、胸に届くまで逃げることができなかった。目をそらしたらそのひとが傷つくような気がして。答えをだしてしまうことをつねにためらう。たとえば一度殺されても、あなたのことを信じてみたいと思うだろう。わたしのことを、いつか好きになってくれないかと思うだろう。それは幼さでしかない。それでも、絶対にあなたのことを許そう。