空欄を埋めなさい

どうやってものを書いていたのかわからなくなった。時々こんな風に、頭がバカになってしまう時がきて、なにもできなくなる。どうやって絵を描いていたのか、どうやって勉強をしていたのか、すぐにわからなくなってしまう。あんなに一生懸命覚えたのに、忘れるのは一瞬だ。

 

詩を書こうと思うのに、水中で歩くときのような抵抗が、胸や目や腕にあって、うまく動かすことができない。そもそも詩なんか本当に書けていたんだろうか。もともとはただの日記でしかない、あんな文章を、詩と呼んでよかったんだろうか。自分で詩を書いてます、なんて明言するのは、モデルさんが、モデルをやっています、と言わずに、美人をやっています、と言い切ってしまうような突拍子のなさがある。ひとが言っているときには、べつになんとも思わないのに。詩という言葉を、発声することに戸惑っているのかもしれない。どうやったら詩が書けるようになるのか、わからない。いつか書けるようになるんだろうか。真っ白な紙を見ても、汚してしまいそうで触れない。こんなんじゃ、だめなのに。全身からすっかり力がぬけてしまって、今夜は取り返しがつかない。