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呪いを解かなきゃ

 

「え?」と聞き返されることが多くなった

どうやら声が小さくなったようだった

 

以前は人前でマイクもなしに話すということが好きで

演劇なんかをちょっとかじったこともあった

大学にはプレゼンで入ったし

明瞭とした口ぶりで、声を張りあげてハキハキ喋るひとが好きだ

今でも、そういう凛とした立ち居振る舞いはうつくしいと思う

 

でも前のように、えらそうに喋ることがなんだかできない

学べば学ぶほど、自分の愚かなところが浮き彫りになって

賢そうに語ることができなくなってきたのかもしれない

不出来なものを、さも誇らしげにプレゼンテーションすることは

嘘をつくということだと

思ってしまっているのかもしれない

 

 

心のこもっていないままにくり返し使うと、言葉は呪いになる

「可愛い」「女子力」「いじめ」「ゆとり」「就活」「経済」「復興」

使い古された言葉たちは言葉としての役目を終えて、そうではないものになって

わたしたちの目の隅で、ぺらぺらと風にあおられ、黄ばんで

ついには傷んで滅びていく

わたしたちが言葉を生んで、言葉を殺すのだ

 

 

たまに出くわすと嫌な気持ちになる、バスの運転手さんがいる

彼はこうくり返す

「揺れますのでご注意ください」

「走行中に立ちますと危険です、ご注意ください」

「このバスはxxにはとまりません、ご注意ください」

「お忘れ物のないようご注意ください」

「窓が閉まりますのでご注意ください」

まるでボタンを押すような調子で、ひとつの停車場を過ぎるたび、この台詞をくり返す

 

こんなのはだめだ

こんなのはただの呪いであって、サービスでもなんでもない

 

 

たとえそうすることが、どんなに自分にとって都合がいいとしても

嘘はだめだ

嘘をつくとね、自分の大事な部分が汚れていくのがわかるんだ

目に見えない、手の届かないところで

人知れず傷んで滅んでいくものがあるんだ

 

だから、だめだよ

 

お願いだ