自由の適用範囲

右折して、目の前に下がり途中の太陽がやってくる。フロントガラスがすこしのあいだ白んで、また透きとおる。まぶしさのなか、からだのすぐ脇を大きなトラックが通り過ぎて行くから、胸元がスカスカする。肩のあたりで固まっている力を流す。私は息をつくことがすきなんだけど、それっていつも緊張しているってことかもしれない。そういうことに気づく度に、今さら傷ついたりしないけど、なんだ、って思うくらいはする。生活に緊張感がほしくて労働したりものをつくったりしているようなところがある。でも呼吸のスピードで逃がせるような緊張感はさっさと捨ててしまったほうがいい。

東京行きのバスチケットをネットで予約する。新幹線だと片道5000円、バスだと往復5000円。私はスピードにはこだわらないから、お金のことを考えたら絶対にバスの方がいいんだけど、それだと行って帰るだけで一日が終わってしまう。画面をクリックする度にニュースで見た事故や、先日のことを思い出したりする。車が引き起こす事故の可能性が0になることはないらしい。それでも車がある世界を受け入れて生きている、というか、世界について受け入れるとか受け入れないとか、そんな選択肢はなくて、ただ世界を恨むか恨まないかという問いかけがあるだけなのかもしれない。