疲れてるおかげ

バイトが終わって、バイト中はできなかったことをやって自分を自分に戻している。それはつまり、すこし厄介な本を読んだり、深夜ラジオを聞いたり、カロリーの高い映像作品を見てみたり、といったことなんだけど、まだまだ自分に届くには時間がかかるみたいだ。本は一度に読み切れないし、ラジオを聞いてる途中で寝てしまう。

片づけの日の午後、大粒の雨が降って、それをしばらく覚えている気がした。帰る頃には虹が出そうなくらいに気持ちよく晴れていて、何かが終わって人と別れる日にはうってつけの天気に思えた。あまりものごとの終わりに執着しない性格で、卒業式でもろくに泣いたことがないのだけど、もうここに来てテラスの落ち葉を掃くこともないのだということがなんだか胸に余って、帰りがけにカフェが併設されている本屋ですこしぼーっと立ったり座ったりしてから帰った。この2ヶ月間、べつにいいことだけがあったわけじゃないけど、私を元気にしてくれた場所で、時間だったと思う。駐車場から見える夕焼けがうつくしく、太陽がただやさしく見えるのは疲れてるおかげなんだと思った。雲海も水たまりも静かにオレンジ色の光に滲んでいた。