わざわざ口にして

バイトの面接をした。FaceTimeで。むかし神保町の喫茶店でバイトしてて、それを職務経歴に書いたんだけど、社長もその近くの喫茶店で働いていたとかで、3秒くらいで意気投合して「ここで働くのに本当に相応しい人材だよ」みたいなこと言われてその場で採用になった。バイトしてたときも思ったけど、神保町の喫茶店は謎の連帯感があり素晴らしい。そのあと、一応採用通知もきた。久々の【試験】だったから、臨戦態勢を整えて通話ボタンを押したんだけど、こんなこともあるのか。なんにも試されるようなことはなかったけど、それでもどっと疲れた。明日、ちゃんと起きれるだろうか。

FaceTimeは初めて使ったけど、ビデオ通話は何回かしたことがある。どれもあんまり、いい思い出じゃないけど。相手の顔が見えるのに、そして相手に顔を見られているのに、目が合わないのが嫌だ。それだったら音声だけの電話のほうがずっといい。ちゃんと会話している感じがする。そもそも、ビデオ通話で話す人っていうのは、私の話なんかあんまり聞いてなかったから、そのせいもあるのかもしれないが。あーーーー。やめよう。なんだか気持ち悪くなってきた。

バイトに受かってしまったから、世界で一番使われていない自動車免許を活用しないといけない。本当に大丈夫だろうか。バイトより、通勤のほうがヒヤヒヤする。そんなことを思いながら夕方になって、散歩に出たら、山際からうすい虹が一本のびていた。そういえば以前、百貨店の仕事の面接に行った帰りにも、こんな虹を見た気がすると思った。期待よりも不安のほうを大事になぞってしまう自分だから、「いいことありそうだ」とわざわざ口にして写真を撮った。ひまわりの上に置くには曇りがちな空、それは不完全だけど今日という日に相応しいと思った。