そのまま

3年前に司書講習に通っていた。初日、ぱっと会場を見渡して、いちばん仲良くなりたい子の隣りに座ったら、同じ大学の卒業生だった。ファスナーのマークが胸元にプリントされたネイビーのTシャツに、グレーのロングスカートを合わせて履いていて、それは姿勢のいい彼女によく似合っていた。その頃はまだ短歌は読むだけでいいや、と思ってた時期だろうか。いや、本にはまとめて、売ったりしてたけど、たしか投稿とかはしてなかった頃で、でも読んでる人が増えたら楽しいだろうとは思っていたから、その講習で知り合った人に、思いついたら貸していた。特に彼女は、私のギャグにはあんまり笑ってくれないけど、短歌では笑ってくれるから嬉しかった。たぶん今、探してるけど見あたらない本は、その子に貸したきりだ。もう買っちゃおうかなあ。なんとなく、もう会わない気がする。そして、それでいい気もする。だらんと畳に横になって背伸びをすると、なんだかあの頃のことが、背筋を通り抜けていくようだ。帰り道に、ソフトクリームを食べながら帰るのにつきあってくれたり、休み時間にiPod touchで高校生ラップ選手権を見ていたらウケてくれたことが、嬉しかった。

8月の思い出はいつも明るい。夏は好きなことばかりしているから。世間には、もっと頑張っている人がいるだろうな。でも頑張ってるから、だからなんなんだろう。とかなんとか言ってるうちに、そのうち27になる。もうちょっと偉そうな大人になるつもりだった。予定では。でも悪くないな。思い通りにならないのも、本を貸したままにすることも。