覚えている

連休中は祖母の3回忌があり、実家に帰省した。前日、末の弟がピアノを教えてほしいとせがむので、途中まで読みを書いてあるジムノペディの楽譜を渡して、ピアノで遊んでいた。そういえば今までも何度か頼まれて、その度冴えない返事をしてうやむやにしていた。教えられるほど、ピアノを知っているか不安だったのだ。楽譜は昨年の夏休みに買ったものだ。まだ弾けない。しかしバイエルは捨ててしまっていた。電子ピアノの鍵盤を撫でて、基準となるドの話やト音記号ヘ音記号の話、シャープの効果など、ごく基本的なことを話した。ピアノを習っていたのはもう十五年も前のことなので、自分がすらすらとそういった情報を口にするのを不思議に思った。

身体で覚えたことを、覚えていることをいつも不思議に思う。言葉で思い出せないことはすこし信用できない。弟は今年大学生になったのだが、今でもギターでの作曲をつづけているらしく、楽譜の読み方がわかってうれしいと喜んでいた。ピアノとギターの違いも教えてくれたのだが、私はあんまりよくわからなかった。まあこいつが楽しいならいいかと思って流して聞いていたのだが、ふと「姉ちゃん、最近絵を描いてる?」と聞かれた。本ばかり読んでるよ、と言ったら、絵も描いた方がいいよ、と言われた。てらいなく言うので、そうかもしれないなあ、と思った。