また、人の傘に入って帰ってきてしまった。見慣れないピンク色の折り畳み傘が、台所にあって、そこだけちょっと明るいような気がする。私は傘をよく忘れる。この前も雨の予報の日に、「あー、傘、ないんですよね」職場で先輩にそう言うと、「貸そうか?」と聞かれ、置き傘にしているという、その小さな傘をロッカーから持ってきてくれた。

雨の日に、ちゃんと傘があることって少ない。長野に住んでいたころからそうだった。でも、田舎では、雨の日に傘をさしていなくてもそこまで目立たない。コンビニがそんなにないから、突然のスコールのときなんか誰も対応できないし、そもそも人が道を歩いていたりしない。だからと言うと、田舎の人に怒られそうだけど。でも雨に濡れるのも、いいものだよ。つめたい水に打たれることなんて、シャワーが故障しないかぎりそんなにないことだし。頭がすっとする。あと、雨があんまりひどいときには、バス停でたまたま居合わせた人が傘にいれてくれたり、目の前に車がとまって突然見知らぬ奥様がビニール傘をくれたり、雨宿りしてた車庫の持ち主のおじいさんが車で送ってくれたり……みなさま、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。