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まさかの健康

家についたらまだ、ばらが咲いていた。喫茶店の先輩がお店を辞める日にくれた、赤いばら。茎を整えて花瓶にさしてしまってから、翌日から家を空けることを思い出したのだった。残念だけど、帰るころにはもう枯れているだろうなと思った。しかし年が明けたその日、花は堂々とした満開のまま、わたしを迎えてくれた。うれしかった。重たそうな花びらをつつく。びくともしない。

実家を出るときにはさみしかったはずなのに、東京の部屋についてみると、それはそれで落ちついてしまうから不思議だ。まあいいかそれくらい。やらなくてはならないことが山積みの毎日の、朝が苦しいことに変わりはないし。最近さみしがりだな。この前も友人を2時間のドライブにつきあわせてしまったし、ママさんやお客さんの顔を見ると1ヶ月後の別れがしんどくて帰り道につらくなる。もうすこしあっさりとした人間だったはずなのになあ。

執着することはきらいだ。でもわたしにかなしみを教えてくれた、数々の人の情けに、感謝しなくもないような。いやいいや。もうすこしくらい、ふさいでも。もたれあったりひき離されたりして、あなたもわたしも一人で生きていく。元気でやってください。元気でいるから。受け入れたら、口ずさむ音楽がだんだん明るくなっていく。猫背をすこしのばしてみる。ほったらかしのばらみたいに、思っていたより丈夫なこころがあるんだ。