秋の星よりとうめいなひかり

喫茶店のカウンターで水を飲んでいたら、十字の形の星の名前を聞かれたんだけど、わかんないから素直に「知らないです」って言ったんだ。そうしたら「詩人なのに星のことを知らなくていいの?」ってせめられた。たぶん占い師とかと混同しているんだけど、なんだかセンスのあるセリフだったから、思わず「勉強します」って答えちゃった。わたし、覚えるよ、カシオペヤ・オリオン・アンドロメダ。この町からも見えるのかどうか、知らないけど。でも勉強なんてものはだいたい、役に立つかどうかなんてどうでもいいものばかりだから。

覚えていられることにはかぎりがある。メモをとれない感情が、いつもからだに有り余る。なにか、あなたにどうしても言っておきたいことがあったんだけど、あなたを目の前にすると、それを失ってしまう。いつだって、それはかすかでこころもとない。とおくでしずかに点滅する灯台の合図のように。わからない。それが何なのかまだよくわからない。そちらに行かなくてはいけないとわかっている。でもその方角は風がつめたいから、動きたくない。肌が切れそうにひどい。こんな風をずっと前にも感じていた気がする。だからだろうか、あなたのことがなつかしい。