部屋の電球が切れて3ヶ月。母が遊びにきて有無を言わさずとりかえてくれた今、とても明るい。ありがたい。でも夜なのにこんなにまぶしいなんて、やっぱり何か間違ってるんじゃないだろうかと思ってしまう。電球を見上げて「へやがあかるいよ…」とびっくりしていたら「それが普通の生活です」ときっぱりとした口調で言われた。おわかりだろうか。わたしの母はまともなのだ。

家族といると、健全という2文字の漢字が頭にうかぶ。わたしが不健全かというと、そういうわけでもないと思うんだけど。普通ではない(らしい)わたしは、普通(らしい)家庭のなかでは、よくもわるくも目立ってしまうようで。大げさに言うと、疎外感のようなものを感じているのかもしれない。わたしは剣道をやめた。わたしは一般大学に行かなかった。わたしは公務員にならなかった。わたしが望んだことは、すべて父の望みとちがうことだった。後悔しないでいられる方法を教えてやろうか。それは常に前に進みつづけていくことだ。わたしにできることなんて、それだけなんだ。母がえんえんといきものがかりを流す車内で、「どうしてもいけ好かない人間をエスプリの利いたジョークでこらしめたい」とつぶやいたら笑っていた。いや本気なんだけどな。青い空に思いきりよく走ったピンクの夕焼けを見る。「きれい」と歓声をあげる。母はどんな顔をしていただろうか。思い出せない。それでも、わたしは幸せになれると思う。だから、わたし達は幸せになれると思う。