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しずかな穴

ギャラリーに行こうと思ったのだが、道に迷って行けなかった。住宅街、怖い。生活に拒まれている気配がする。帰りに、やけになって古本屋で本を4冊も買ってしまったし、ちょっといいコーヒーを飲んでしまった。おいしかった。たまに、からっぽの自分に何かつぎたすかのように、読んだり飲んだりしてしまう。そうしたささやかな贅沢の数々も、ブラックホールに吸い込まれるように、この体へと消えていく。それがふしぎだ。怒ることも泣くことも、もっと言えば傷つくことも、あまり怖くはない。怖いのは何もないことだ。しんと静まり返ったへやにひとりでいると、どうしたらいいのかわからなくなる。自分の部屋が怖いのだ。なんて言えば、また、怖がりだと笑われてしまうだろうか。随分と性格を変えてきたと思っていたけれど、わたしは未だに、そういうことを考えたくて仕方がないのだな。

「愛の名のもとであれば、何をしたっていいんだよ」と言われ、「いやダメでしょ」と即答したが、そう言ってもらい、すこし楽になった。そうだな。もしかしたら、好きなひとに好きと言っても、いいのかもしれない。何も約束できないことがうしろめたくて、何も言えないままでいたけれど、そんなこと、ほんとうは誰も求めていなかったのかもしれない。ただわたしが、わたしを許せないだけで。自分を許してほしい、と言ってもらったことがある。あのときよりもっと、今になってその言葉が深いところで響いている、てざわりがある。大丈夫だ。まだ痛い。痛いということは、何かがどこかに効いている。治っていこうとしている、証拠なんだ。だから心配ない。心配ないよ。