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何故かなしいのか教えてくれよ

あえて夜のコンビニに行く。チョコが食べたいとか、雑誌を立ち読みしたいとか、口実はいろいろあるけど、たぶんちょっと自分を痛めつけたいだけで。ピアスはひとつもあいてないし、飲酒も喫煙もしない。というか、できない。非行をやれない人間は、どうやって不良になったらいいんだろう。仕事はまじめにやっていることだし、生活くらいはズレてみたくって、こうやってガス抜きをしているような気がする。なんか情けないな。けれどこんな情けなさが、いつか誰かの役に立つかもしれないと思うから、すべてあますことなく感じると決めた。僕はたぶん、きみが思ってるよりはずっと、ろくでもない人間だよ。でも、同じろくでなしのきもちならわかってやれるんだ。それだけが誇りかな。

何故かなしいのか教えてくれよ。あれから随分時間もたったことだし、僕たちはもう、冬の日に道端に座ってカフェオレなんか飲まなくてもいいんだ。お酒も飲めるようになったんだぜ。いいかげん、自分の頭で考えてくれよ。どうやったら君が幸福になれるか。自分の人生をやれるのは自分だけなんだってこと、きみはどうしてこう何度も忘れちまうんだろうな。また夜中に誰にも電話をかけられずに、好きな音楽を聴いて泣いたりしてるんだろう。知ってるさ。それに対してなんにもできない自分の、笑っちゃうくらいの無力さも。

僕たち大人になっていくようだ。よかったよね。僕はさ、田園と畑しかない小さな町に生まれて、早くひとりになりたいって思いながら育ったんだ。早くひとりになって、自分を助けてやりたかった。サリンジャーライ麦畑で見失った、あのときの自分を。僕はね、やっとつかまえられそうなんだよ。きみはどうしたんだ。そんなかなしそうな顔をして、「何かいいことないかな」なんて、つまんないこと言っちゃってさ。何故かなしいのか教えてくれよ。今なら、気のきいた慰めのひとつやふたつ、浮かんできそうな気もするから。