石の味

今週のお題「愛用しているもの」

寝る前に石を転がして遊んでいる。ホタル石や瑪瑙、名前を忘れた、ひかりの加減で光る石たち。鉱石が好きだ。アクセサリーショップで売っている、指輪についた小さな石、何カラットだか知らないそれよりも、随分と安上がりで、いびつなたくさんの形。それを買ったときのきもちや、くれた人の顔やシチュエーションは、今でも覚えている。そう、たまに、お土産で買ってきてくれる人がいるのだ。そんな石を見てると、それをくれた人に会いたくなってしまったりもする。綺麗な贈り物は、まるで綺麗な思い出みたいだ。

今ながめているのは、オレンジ色の洞窟みたいな石だ。先輩がミネラルショーのお土産に買ってきてくれたやつ。どんなのが好きかと聞かれて、「おいしそうなやつ!」と即答し、困らせた覚えがある。おいしそうだな。鮮やかなオレンジのまわりに、砂糖のようなホワイトが散らしてある。さわったら柔らかそうなのに、かたい。

綺麗だな、という感覚と、おいしそうだな、という感覚が、わたしのなかでは何故かくっついてしまっている。竹尾であたらしい張りのある紙などを見ていても、感動するのといっしょに、食べ物をくちに含んだような感触がある。見ることを味わうとも言うし、同じことを考えた人がいないだろうかと、近年思っているんだけど。どう?

このごろは、寒くなったね。きみは大人になってしまったようだけど、たまには、アニメやドラマを見て、愛や夢について考えたりしているの? わたしはさ、この頃、生活をやるだけで精一杯で、なんで優しくなりたかったのか、賢くなりたかったのか忘れちゃった。きょうなんか、ひさしぶりに歩いた朝の空気があんまり白っぽいから、なんだかビデオの中みたいで、生きていることがちょっと信じられなかったよ。大して中身がつまっていないのに、ある朝突然、手の中が空っぽになる感覚を、もう何百回も繰り返している。バカなんだよ。でも、バカになることは、わたしの数少ない趣味のひとつだから、どうか取りあげないでほしいんだ。