読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

できうるかぎりのあたたかい食事

就職(転職?)活動をしなくてはいけないが、なりたい職業がひとつもない。もはや愛着さえ持てればなにをしたっていいのだが、インターネットで求人情報というものを眺めても、人の顔が見えてこないので区別がつかない。なんでこんなくじ引きみたいな感じで企業を決めねばならんのだ。りふじんだー!

と家でぶつぶつと悪態をついていたら、学生から本のつくりかたを教えてくれと呼び出しを受けたため大学に行く。蛇腹製本か。忘れたな。あやふやなままがんばってレクチャーするが、学生も疲れきっていたので伝わったかギモン。構内は芸祭の準備期間まっただなかだ。あちこちで屋台をたてたり、パフォーマンスをしたりしていて、卒業生には居場所がない。もともと自分の居場所だと感じていたかというと、そうでもないのだけど、働くようになってからはどこにいても、完全な自分ではいられないという感じがして緊張する。完全な自分ってなんだ。もっとかってに自由になっていいのでは。ふつうにベンチでパンを食べたいだけなんだ。

家につき、レンジで牛乳をチンして、ああもう夏じゃないんだなって何度もたしかめる作業。あったかくした水で食器を洗い、そのお湯に何度も指をくぐらせる作業。実家でとれた新米を炊く。みそ汁をつくる。おかずを煮る。あと納豆を混ぜる。納豆は最近すきになった。数週間前に、助手さんがお昼に分けてくれ、数年ぶりに食べたらとてもおいしく思えたのだ。このごろ毎日食べている。箸でぐるぐるとかき混ぜると、あのねばねばが部屋のあかりにきらめいて、ああ意外と綺麗だなって思う、それが気に入っている。夕飯があたたかい。それだけでいいような気がする夜があって、それでも私達は、知らない人をさがしている。