かすれてしまってよく書けない

なにかをあきらめるために
言葉をさがすの、やめよう

なにかをわすれるために
空をあおぐの、やめよう


間奏のような日々が続いて
かなしいともうれしいとも思わないまま
ぼんやりと眠たい目で
将来のことを聞かれても何も断定できずに
ただ毎日なんとなく満ち足りて
微笑んだような顔をして
過ごしてしまっているから
あの子がまたいつものように、深夜にしょうもないことを言ってきても
今は叱れる気がしない



銀座とか、表参道とか、歩いていると、
しあわせかい、って
聞いて回りたいような気持ちになってしまうから
嫌なんだよね
正しさとか、美しさとか、
そういうものにすがって生きているから
時にはそれを他人に押しつけたくなる
いけないな
でも
しあわせかい
それだけが、心配



このごろ、言葉が奥から出てこない
歌うときに「ノドじゃなくてお腹から声を出しなさい」と、
言われたことがあると思うんだけど
言葉も出す場所によって響きが変わるから
今はノドから言葉が出ているような感じで
かすれてしまってよく書けない
いつも寝ぼけているような気分で
すべて春のせいにしてもいいけど
それじゃあちょっと甘えすぎっていうもんで
困ったな

(何も困るようなことはない)



早咲きの桜
庭にきた鳥
パステルカラーのお姉さん
早帰りの高校生
手を振っていた景色
遠ざかる山並み
家族のいる町



すべてが
うんざりするほど優しい