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はためく

元気のないときに春めくと焦る。焦るけど、このごろ元気だから、しっとりと濡れてあたたかな空気にも、うまく馴染んで歩いていける。風がふいているから、腕をひろげたくなる。形の無いものを受けとめようとして。きょう読んだ本に、[風はいのちの生成装置である]というような一文があった。風は目に見えない。それでも、窓際で揺れるカーテンや、頬にすれる髪の一房が、わたしに風を教えてくれる。もっと吹いていてほしい。髪なんてぐしゃぐしゃに掻き乱していってくれていい。あまり固まりたくない。どこかひとつに留まることで、知らぬ間に通り過ぎてしまうような、些細な現象のすべてに気づきたい。大事なものが目に見えないなら、たまには目を閉じたっていいじゃないか。吹かれていこう。揺れていよう。かけがえのない、たったひとつのものを選び取るため。