朝いちばん
正しい人が目の前で傷ついているのを見るのが嫌だ。
嫌で嫌でしょうがなくて、泣いてみたり怒ってみたりいそがしい。
それなのにいつも、その人に間に合わない。
傷ついているのはわたしじゃないのに、どうしようもなく痛む部分があって、
それを生まれてから21年、ずっと持て余している。
どうしろっていうんだ。もういい加減こんなもの捨ててしまいたい。
傷ついた部分を切りとってなかったことにできたら、きっと楽なのに、
引きずったまま歩いて行く。
これだけは捨てられない。
今朝、いつもより早く起きて、いつもより早く大学へ行った。
息がしろくて、空気がつめたくて、
まるでたましいが駆け出していこうとしているみたいに、
すばらしい朝だった。
すばらしい朝は、わざわざ手袋をはずして歩きたくなる。
何か特別なものにふれることができそうで。
もっと寒くていい。今年はまだ雪を見ていない。
降ってほしい。
もしも雪が降ったら、
うつくしい雪の朝がやってきたら、
走って行きたいなあ。
どこまでだって走って行きたいなあ。
間に合いたいなあ。
誰に。
どこに。
そんなの決まっていないけど。