わたし達はずっと気づきたかった

一日を始めるためにはやわらかい水がてのひらに一杯あればそれで充分 てらいなくほしがること無闇になげかないことそれさえ気をつけていればいつまでも傷ついている気弱な子どもにならずに済む 顔に水をください四半世紀生きてきたこの顔に一杯の水をぶつけ…

花を飾ろう

癒されようと思って、白いガーベラを一本だけ買って帰った。友人からもらった一輪挿しに活けて寝た。すこし長い茎が、夜まではへなへなと曲がっていたのに、朝になると天から吊られているようにピンと伸びていた。しゃんとしろと言われているみたいで、うれ…

からだは透明なコップだから

駅の出口から団地のあかりが見える。団地。一生住まないと思う、集合住宅が嫌いだから。それが今日は、ひとつの生き物のように煌煌とかがやいて、見える。光の温度がどことなくやさしく、月明かりのように霞んで見える。なんだこれは。嫌いなものを受け入れ…

まだ広い部屋

パソコンを開いたら、下の方に一行だけテキストエディットが展開していて、8888888…と羅列した文字があった。拍手だ。 今、新居にひとりで座っていて、うれしくて、すこしさみしい。やりたい仕事が見つかったはいいものの、物件の契約がなかなか進ま…

どこかで花火の音がする

むかし「風になりたいと思ってるでしょ」と言われたことがある。それもあまり特別ではない文脈のなかで。なんだっけ。いつ、どんなときに、誰に言われたのか、覚えてない。風になりたいと思ってるでしょ。そんなことってあるか? こんな風に疲れないまま迎え…

ねころんで夜

暑い、どこにも行きたくないと思いながら、寝転び、磨りガラスにうつる光のかけらを見ているときの、うっすらとした意識のここちよさ。10センチだけ開けた窓の隙間から、すずしい風が頬に降りてくる。空気はそこで止まっている。この部屋が嫌いである。生活…

野蛮

明日は母の日だから、カーネーションを買おうと思い立ち、駅前に行ったらものすごい行列になっていた。わたしは花が好きなので、たまに花屋に行くことがあるのだけど、並んだことは一度もなかった。なので、それを見てちょっとおかしくてあったかい光景だな…

休み時間

目の前に運ばれてきたアイスコーヒーを見て思い出した。今日は何曜日だったっけ? 土曜日だ。ということは、今日はバイトがない。せっかく、ここまできたのに。急に思い立って、本のたくさん入った紙袋を持って、古本屋へ立ち寄って、売っぱらって買って、す…

春とアルコール

前を歩く人が上を向いているから、つられて見上げたら桜が咲いてる。なんてことが春には当たり前のように起きて、ロマンチックだ。そんな風に思うのは今お酒が入ってるせいかもしれないけど。あ〜。お酒っていいもんだな〜。浅草にお花見に行った。浅草寺の…

いちばん安全な場所

ひとつ息をつくために何十秒も息をとめないといけない。やりたいことってなんだ? 夢はなんだ? 十年後に何をしていたいのか? という、ひと通りの自問自答をパスした末に、これといって何かを獲得したわけでもないけど、「まいっか」って言うことができた。…

水色の生活

部屋が花束であふれかえっている。どれも大学の送別会でもらったものばかりだ。ミュージシャンじゃない人生でも、こういうことって起きるんだあ。と朝、起きるたびに思う。わたしは働くだけで精一杯だったのに、こんなにやさしくしてもらって、ほんとうによ…

好きなだけ

よく「好きなものを仕事にすると嫌いになる」って言うけど、あれをどう思う? あれは半分ほんとうで、半分はうそだと思う。なぜなら好きなものを好きなだけでいつづけることなどできないからだ。仕事にしたから嫌いになるというのはちょっと違うと思う。好き…

黒に藤波

閉園時間ギリギリに庭園美術館に行った。それというのも招待券をもらっていたので。七宝という技法でさまざまな模様の描かれた、やんごとない器の数々を見たのだけど、思っていたよりもおもしろかった。ああいう装飾過多なものがわたしも昔は好きだったのだ…

今にしてみればやさしい

地獄みたいにいそがしい、と聞いていた日曜日はなんとか乗りきることができた。注文、お客さんの案内、お運び、レジ、注文、片づけ……。くるくると回るようにその時々のやるべきことをこなしていると、自分のなかに妙なリズムが生まれて、ときどき「自分」と…

思い出したい

夜風が痛くない。どこまでも歩いて行けそうでどこまでも歩き、疲れてファミレスに入った。ファミレスにはファミリーしかいない。ドリンクバーに行きづらい。やっぱり喫茶店だな。と思う。ひとりで行くのは喫茶店だよ。うん、来週、あたらしいお店、どっか、…

あたり

買ったばかりのスニーカーで散歩していたら、左足が靴擦れになってしまった。からだのどこかが痛いと、マイナス思考になってしまう。何かいいことないかな、と思いながら自販機でココアを買うと、ぴーっと音が鳴って、もしや、と数字を見たら、当たっていた…

脱線

こんこんと12時間ねむりつづけた。くたびれると、すぐ夜更かしに甘えたくなるけど、やはり睡眠は効く。睡眠と日光が憂鬱に効く。荒れ地となった部屋の手入れでもしようと思っていたのだけど、せっかくの休みなので、すべてをほったらかして、買い物をしに行…

大丈夫にならない方法

朝、大学に行っていつも通り仕事をしていたら、備品を返しにきた学生が「朝からたいへんですね」と心配してくれた。こんな卒業制作まっさかりのたいへんな時期に、仕事している人間を気づかってくれるなんて、やさしい子だと思った。てらいのないやさしさに…

ハンバーガーなどを食べよう

寒さに舞いあがってしまうから、冬はもう終わっていい。わたしの部屋は西向きで、外に出ないと朝がこないから、いつも心の準備ができずに扉を開けるのだけど、まぶしくてびっくりするよ。でも、まあいい。べつに、それはいい。朝は寒すぎないほうがいいけど…

まさかの健康

家についたらまだ、ばらが咲いていた。喫茶店の先輩がお店を辞める日にくれた、赤いばら。茎を整えて花瓶にさしてしまってから、翌日から家を空けることを思い出したのだった。残念だけど、帰るころにはもう枯れているだろうなと思った。しかし年が明けたそ…

夜道

このごろ、夜空やばい、って思うんだよね。ヤンキーみたいに。夜空やばい。ほとんど宇宙だし。なんだこれ。頭がふわっふわだな。今日もまた終電か。帰り道がさむいことはそんなに苦じゃない。喫茶店の忘年会だった。たくさんの人のあつまりが苦手で、今日も…

行方不明

昨夜はひどいどしゃ降りだった。バイト帰り、いつも通り満員電車に乗っていたら、足下に傘が落ちてきた。どうも左前で立ったまま寝ているおじさんのもののようだ。みんな気づいているけど知らんぷりしている。いたたまれず、わたしは「落とされましたよ」と…

今日は日曜日ですか?

待ち合わせまでまだ時間があったので、駅前をふらついていたら、横道から現れたおじさんに突然「すみません!!今日は日曜日ですか!?」と聞かれた。驚いて「はい!!」と即答した。おじさんは「そうですか…」とさがっていった。なんだったんだろう。びっく…

ワンコイン

百円玉と五十円玉だったらどちらのほうがほしいだろうか。今日はずっと、帰りの電車でそのことを考えていた。わたしの働いている喫茶店のランチセットは九百五十円で、だいたいのひとは会計のときに千円札を一枚、お財布からだす。でも、千円札と、五十円玉…

月曜日のゴミ

ココアの空き缶を捨てるため 外に出る夜はいつも わたしが思うよりあかるいこんなことあまりにも当たり前すぎて今さら口にしたくはないのだけれどやはり星は多く見えるにこしたことはないしどんなに冬だと言いふくめたところで夜は寒すぎないほうがいいのか…

眠りはいつもきみにやさしい

風がくる夕方4時半何も急かされてなどいない私のからだはただ深く息をするためだけにあっておいしい好きだ 行こう 夜へと地面がぐらぐらするような疲れのなかでもふと立ちどまるのはまた忘れ物をしていないか心配だからだけどあわただしさにつぶされてしまう…

風にめざめる

現実にひきもどされる。電車のドアが開いた瞬間、ふゆのにおいがしたのだ、たしかに。四角いフレームの中にはコンクリートの壁しかない。けれどむこうに「冬」とラベルの貼られた季節がたたずみ、わたしにこれまでの何かを思い出させる。首と手の甲にあたっ…

生きる冬

「アンディモリ」とだけ携帯にメモしてあったので、気になってツタヤで借りた。ミュージシャンの名前だということは覚えていた。でも誰にすすめられてメモをしたのかは忘れてしまった。わたしにアンディモリを教えたのは誰。名乗りでてください。帰りにブー…

傘の不思議

小雨なので傘はささなくていいかと思った。しかし家を出てバス停につくころには本降りになっていた。ぼーっと木の下で待っていたら、見知らぬ婦人が「よければすこしはいってください」と、傘を半分貸してくれた。これで知らない女性に傘をさしてもらうのは…

さらば(そういうことなら)

わたしなりの追悼で書き始めた俳句が、夕方やっとまとまった。きょうは祖母の四十九日だった。偶然きのう知ったのだけど。明日原稿用紙にまとめて封筒に入れよう。すこし楽になった今となっても、人が死ぬということはよくわからない。これについて話そうと…