花の幽霊

昨年の春から写真を撮り始めた。ボタンを押せば撮れるインスタントカメラで。きっかけがどれだったのか明確にはわからないのだけど、バラ色の日々 というMVに使われている写真がたまに見たくなる。フィクションの優しさに支えられて過ごしてきたというのに、…

お祝い

結婚式にお呼ばれして行ってきた。新郎新婦とも大学時代の先輩後輩だったけど、おつきあいしていること自体を招待状で知り、見たときはへんな声が出たものだった。わたしに見えないところでいろんなことが起きてるんだなぁ。まだ親戚以外の結婚式というもの…

あかるい洞窟

夕方、天気を味わおうと思って玄関のドアを開けたら、想像以上の大雪だったので、パタリと閉じた。今月いっぱいは月曜が休みなので、ラッキーだったな。食べ物ないけど。お茶漬けでがまんする。なんだか、嵐って感じだ。ここが雪山の洞窟だったらよかったの…

約束する

私的な話をしてもいい人たちと久しぶりに会い、たましいの焦点のあわせかたみたいなのがよくわかんなくなってしまった。仕事をしていると自分のことを考えずに済むから、それはからだにとって、とてもいいことだと思うんだけど、おざなりにしすぎていると、…

ぜんぶ忘れてしまう気がする

手ぶくろをどこかに落とした。くたくたの、安物の、なんてことない手ぶくろだけど、母が買ってくれたものだった。なんだかさみしいなと思った。試しに片っぽだけはめてみる。それがほんとうなのに、裸の手はかっこわるい。そういえばこの前、風邪を引いてマ…

とっくに新年

しゃらくさい感傷的なオルゴールの音12月なんて今日で終わりにして1月だけ40日に引き延ばしてとっくに新年みたいに生きてもいいような気がするこんな白い真昼に誰かのためにいい買い物をして可愛い女の人の指できん色のリボンをかけてもらうのはなんだ…

星が見えてうれしい

どうしてオリオン座しか覚えていないのかくやしいくらいきれいな冬空 おでんを買って帰ろうかバナナを買って帰ろうかどちらも買わずに帰ろうか 考えている 両足はコンクリートを踏んでいる私の体は地上にあって 考えている 頭は明日の生活のことをそれなのに…

ひと晩中いっしょに起きていてもいいよ

あなたが生まれたとき太陽はどこにありましたか知っていることで便利になれることを僕たちはあまりにもたくさん知ってしまいましたからたまには意味のない質問が必要です 誕生日にロウソクを立てなくなった頃と自分の年齢がわからなくなった頃は同期している…

線になる夜

夜景って 星のことだと思ってた街の光をきれいだと思ったことなんて なかったから違いのわからない いくつものまぶしい点を写真に撮ろうとしているきみのこと何ひとつわからなかったけどふたつの人影が黒いガラスにうつっているのはそんなにわるくなかったよ…

わかってしまわないように

大学時代、卒業制作のときに苔を育てている友人がいて、よくわからないけどいいなと思っていた。そのことについて最近になってふれたら、本人も「なんであんなことしてたんだろう? ほんとうに意味がわからない……」と言っていて、やっぱり意味はわからないの…

きみの頭はいつもおかしい

今週のお題「私の癒やし」 日曜日の長さに耐えきれないならいろはす買って公園にでも行こうか間違ってもどうでもいい映画に行こうと誘われて頭をおかしくされないように パンもコートもいらないくらい綺麗な石を拾いに行きたいいつになく静かな気分だこんな…

わたし達はずっと気づきたかった

一日を始めるためにはやわらかい水がてのひらに一杯あればそれで充分 てらいなくほしがること無闇になげかないことそれさえ気をつけていればいつまでも傷ついている気弱な子どもにならずに済む 顔に水をください四半世紀生きてきたこの顔に一杯の水をぶつけ…

花を飾ろう

癒されようと思って、白いガーベラを一本だけ買って帰った。友人からもらった一輪挿しに活けて寝た。すこし長い茎が、夜まではへなへなと曲がっていたのに、朝になると天から吊られているようにピンと伸びていた。しゃんとしろと言われているみたいで、うれ…

からだは透明なコップだから

駅の出口から団地のあかりが見える。団地。一生住まないと思う、集合住宅が嫌いだから。それが今日は、ひとつの生き物のように煌煌とかがやいて、見える。光の温度がどことなくやさしく、月明かりのように霞んで見える。なんだこれは。嫌いなものを受け入れ…

まだ広い部屋

パソコンを開いたら、下の方に一行だけテキストエディットが展開していて、8888888…と羅列した文字があった。拍手だ。 今、新居にひとりで座っていて、うれしくて、すこしさみしい。やりたい仕事が見つかったはいいものの、物件の契約がなかなか進ま…

どこかで花火の音がする

むかし「風になりたいと思ってるでしょ」と言われたことがある。それもあまり特別ではない文脈のなかで。なんだっけ。いつ、どんなときに、誰に言われたのか、覚えてない。風になりたいと思ってるでしょ。そんなことってあるか? こんな風に疲れないまま迎え…

ねころんで夜

暑い、どこにも行きたくないと思いながら、寝転び、磨りガラスにうつる光のかけらを見ているときの、うっすらとした意識のここちよさ。10センチだけ開けた窓の隙間から、すずしい風が頬に降りてくる。空気はそこで止まっている。この部屋が嫌いである。生活…

野蛮

明日は母の日だから、カーネーションを買おうと思い立ち、駅前に行ったらものすごい行列になっていた。わたしは花が好きなので、たまに花屋に行くことがあるのだけど、並んだことは一度もなかった。なので、それを見てちょっとおかしくてあったかい光景だな…

休み時間

目の前に運ばれてきたアイスコーヒーを見て思い出した。今日は何曜日だったっけ? 土曜日だ。ということは、今日はバイトがない。せっかく、ここまできたのに。急に思い立って、本のたくさん入った紙袋を持って、古本屋へ立ち寄って、売っぱらって買って、す…

春とアルコール

前を歩く人が上を向いているから、つられて見上げたら桜が咲いてる。なんてことが春には当たり前のように起きて、ロマンチックだ。そんな風に思うのは今お酒が入ってるせいかもしれないけど。あ〜。お酒っていいもんだな〜。浅草にお花見に行った。浅草寺の…

いちばん安全な場所

ひとつ息をつくために何十秒も息をとめないといけない。やりたいことってなんだ? 夢はなんだ? 十年後に何をしていたいのか? という、ひと通りの自問自答をパスした末に、これといって何かを獲得したわけでもないけど、「まいっか」って言うことができた。…

水色の生活

部屋が花束であふれかえっている。どれも大学の送別会でもらったものばかりだ。ミュージシャンじゃない人生でも、こういうことって起きるんだあ。と朝、起きるたびに思う。わたしは働くだけで精一杯だったのに、こんなにやさしくしてもらって、ほんとうによ…

好きなだけ

よく「好きなものを仕事にすると嫌いになる」って言うけど、あれをどう思う? あれは半分ほんとうで、半分はうそだと思う。なぜなら好きなものを好きなだけでいつづけることなどできないからだ。仕事にしたから嫌いになるというのはちょっと違うと思う。好き…

黒に藤波

閉園時間ギリギリに庭園美術館に行った。それというのも招待券をもらっていたので。七宝という技法でさまざまな模様の描かれた、やんごとない器の数々を見たのだけど、思っていたよりもおもしろかった。ああいう装飾過多なものがわたしも昔は好きだったのだ…

今にしてみればやさしい

地獄みたいにいそがしい、と聞いていた日曜日はなんとか乗りきることができた。注文、お客さんの案内、お運び、レジ、注文、片づけ……。くるくると回るようにその時々のやるべきことをこなしていると、自分のなかに妙なリズムが生まれて、ときどき「自分」と…

思い出したい

夜風が痛くない。どこまでも歩いて行けそうでどこまでも歩き、疲れてファミレスに入った。ファミレスにはファミリーしかいない。ドリンクバーに行きづらい。やっぱり喫茶店だな。と思う。ひとりで行くのは喫茶店だよ。うん、来週、あたらしいお店、どっか、…

あたり

買ったばかりのスニーカーで散歩していたら、左足が靴擦れになってしまった。からだのどこかが痛いと、マイナス思考になってしまう。何かいいことないかな、と思いながら自販機でココアを買うと、ぴーっと音が鳴って、もしや、と数字を見たら、当たっていた…

脱線

こんこんと12時間ねむりつづけた。くたびれると、すぐ夜更かしに甘えたくなるけど、やはり睡眠は効く。睡眠と日光が憂鬱に効く。荒れ地となった部屋の手入れでもしようと思っていたのだけど、せっかくの休みなので、すべてをほったらかして、買い物をしに行…

大丈夫にならない方法

朝、大学に行っていつも通り仕事をしていたら、備品を返しにきた学生が「朝からたいへんですね」と心配してくれた。こんな卒業制作まっさかりのたいへんな時期に、仕事している人間を気づかってくれるなんて、やさしい子だと思った。てらいのないやさしさに…

ハンバーガーなどを食べよう

寒さに舞いあがってしまうから、冬はもう終わっていい。わたしの部屋は西向きで、外に出ないと朝がこないから、いつも心の準備ができずに扉を開けるのだけど、まぶしくてびっくりするよ。でも、まあいい。べつに、それはいい。朝は寒すぎないほうがいいけど…